あなたの知っているHirose Satoshi “Jimmy”ってどんな人?
 絵画、写真、文学、音楽。アーティストにとっての作品は自分の分身である。その作品からアーティストが何を考え、何を思い、何を感じたのかを知ることができる。

 ギタリストであり、ボーカリストであり、作曲家であり、作詞家であるHirose Satoshi “Jimmy”−。Hirose Satoshi “Jimmy”というアーティストを知りたければ、そして理解したければファーストソロアルバム「Obsession」を聞けばよい。そこに収録された楽曲は彼の人間性を投影させたものだからだ。

 しかし、彼をもっと知れば、そしてもっと理解すれば、音と音、歌詞と歌詞の間にあるさらなる何かが見えてくるはず。そこでHirose Satoshi “Jimmy”の友人や知人、スタッフたちへのインタビューを通じて、アーティストである彼の人物像を浮き彫りにしていくという初の試みをスタートさせることにした。
あなたの知っているHirose Satoshi “Jimmy”ってどんな人?
第5回

最後に登場するのは本人、Hirose Satoshi “Jimmy”だ。

今回のソロアルバム「Obsession」について思っていること、それにこれまでのインタビューで聞かれたJimmyへのメッセージに対する答えなどを聞いてみた。

そこで見えてきた素顔のJimmyは。
ギターを持たずに歌うのは違和感がある(笑)



−まずは「Obsession」について。初のソロアルバム、制作は順調でした?

「バンドでやるのよりも自由な分、苦労はあったかも。バンドは自分一人でやる訳じゃないからどこかで制限があるので。その制限があるおかげで楽になる部分もあるけど、ソロ活動では制限がない分、自由。自由な分、迷いも生まれてくるからある程度コントロールする必要はあったかな。だからレコーディング自体はけっこう試行錯誤だった」


−ソロアルバム、ボーカリストデビューです。PVではギターを持たずに歌われますが…

「初めてです、ギターを持たずに歌うのは。44MAGNUMでは歌わないし、TheGroove Lineでは歌ってもギターを弾きながらだし。PVでもマイクだけ持って歌うってのには自分でも相当違和感がありました。手持ち無沙汰というか。慣れないですよね、何だか」



−しかし、見ている方としてはDavid BowieかMick Jaggerかって感じで新鮮でした。
ところでソロツアーの予定は?44MAGNUMの曲も歌います?


「44はやりません。44はあくまで44、なんで。ソロライヴは早くて秋頃にやれたら理想。セットリストはもちろん今回のアルバムの曲中心になると思う。」



−ステージといえば最近のヘアースタイルは長いですよね

「伸ばしているのはいろいろとアレンジしやすいから。一度髪を短くカットしてしまうとヘアスタイルに制限があるからね」



−そういえば酔っ払って髪の毛を切ってしまうことがあるそうですが(笑)

「ああ、絶対にこの話をされると思ってた。もう十代の時から、酔っぱらってる時によくやっちゃう。それでシラフになったとき、どうしてこんなに切っちゃったんだろう、って後悔する、と。繰り返しです。そういえばM・Yくんのインタビューで俺が三島由紀夫の本や絵について語ったっていうときの話、あれもみんなで飲んで酔っていたときなんだろうね。実はよく覚えていないです(笑)。彼は真面目な好青年だから、あんまり馬鹿な話をこちらからはあえてしません。年上として悪い影響を与えたくないからね」



−酔ったときの失敗談とか多そうですね

「いっぱいありますねえ。以前、知り合いのライターさんと飲んだとき、盛り上がってめちゃ飲みして寝不足もあったからか、深夜その帰り道に道路工事現場で転んだんだけど、顔面からいっちゃって」



−それって大怪我したのでは?

「さほどではなかった。酔っていたせいでしょうね、道路ってサイコー…、 って思って暫くの間倒れたままでいた。でもそのときにかけていた近眼メガネは完璧に壊れちゃいました(笑)」



−飲む話はまだまだ続きますが、居酒屋さん、お好きですよね?

「ああ、T・Mさんの話ね。別にショットバーみたいな雰囲気が嫌いだって訳じゃない。もちろん好きなショットバーもあります。瓶ビールや日酒だけじゃなく、ワインやカクテルも好きだし。ただ昔ながらの意匠のある日本居酒屋のああいう雰囲気が好きです。居酒屋はある意味、俺の遊園地(笑)。居酒屋でもホテルでも旅館でもどこでもそうなんだけれど、人のパワーが残っている空間って面白い。ああいう雰囲気がある空間、好きです」




Jimmyと文学




−今回、歌詞はすべてご自分で書かれています。そこに文学の影響はありました?

「歌詞っていうのは基本的に自分の経験から創ることが多いので、ストーリー的な部分においては文学作品からの直接的な影響ってのはないですね。でも、言葉の流れとかリズムっていう部分では自分でも気が付かないうちにそういう影響が出ているかも。そういう意味では最近まで読んでいたエッセイや小説から、歌詞にその影響が出ているのに気が付きました。全部じゃないけど、そのときにハマっている本の影響、出ていますね」



−歌詞においても言葉の流れや響きという部分は大切ですね?

「たとえば詩や小説なんかの文章でいえば、ゆっくりと時間をかけて読んでその言葉や響きを味わっていく言葉と文章があると思いますね。レイ・ブラッドベリー(注:現在も活躍しているアメリカのSF作家)なんかは読んでいて、ふと読み止めるところがある。このフレーズが読ませどころなんだろうと思う部分で。泉鏡花(注:明治後期から昭和初期に活躍した小説家)なんかの作品なんかでもそう。表現、描写で読むことに集中しなければならない箇所があったりして。歌詞においても似通ったところ、あると思う」


−ストーリーが好きで、何度でも読む作品ってありますか?

「好きな小説はいろいろあるけど、もしどうしても一つ挙げるというならば『千夜一夜物語(アラビアン・ナイト)』、あれが一番だと思います。それぞれ作者不明で何百年とまたがって語り継がれてきた話がひとつにまとめられている。あれ、名作だと思いません?物語として完璧。人の世のすべてが語られていて、それに世界一エロチックですね」




どちらのJimmyが本当のJimmy?



−ステージではクールそうに見えて、実はジョークなんかもいう楽しい人だという印象がスタイリストの高橋恵美さんを始め、多くの人から聞かれました

「クールみたいに見えるように意識して、ポーズを取っている訳じゃありません。そんなに器用じゃないからね(笑)。テンションを高めて、ミスをしないように集中している状態です」



−そういえばステージではMCもしませんね

「良いライブをするために集中しているだけでなく、いっぱいいっぱいになっているので。ステージではとてもじゃないけれどジョークをいう余裕はないです。あ、TheGroove Lineでは雰囲気で言いますけどね」



−なぜそこまで集中するのでしょう?

「集中しないとミスるから」




Jimmyがいま、興味・関心を持っていることは?



−いま、興味、関心のあることは?

「ここ10年は音楽がいちばんの関心事だし、この約3年はギターを弾くのに一番の関心がある。それとは別に最近は人体のことにも興味あるかな」


−それはまたなぜ?

「俺の家族や親戚といった身内の者の中には高齢者が多いからかな。それから、20代のときには自分自身が興味の中心というか、カラダ中心に生きるもんだし、30代でもう少し周りが見えてきて、いまでは他者に対してすごく興味や関心がありますね」


−最近、どこもかしも中国、中国ですが、中国に関心は?中国でデビューしてみたいとかあります?

「そういうことは考えたことないけれど。あ、昔は北京に行ってみたいって思ったことありますね。ベルナルド・ベルトルッチ(注:イタリアの映画監督)の『ラスト・エンペラー』がきっかけで、『わが半生』(注:戦前、満州国の皇帝だった溥儀の自伝)をちょっと掘り下げてみたりしたから。でも中国だけでなく、世界中、いろいろな国のことに対して興味あります。だからグローバリゼーションってことについても興味を持った時期があります。俺はグローバリゼーション、憧れるけどあくまで理想にちかいと思っています。人種とかそういうものの壁を取り払ったような世界、現実的には難しいだろうなあと思うんだけど」


−ジョン・レノンが『イマジン』で描いたような世界は確かに・・・。ところでちょっと想像しにくいんですがビートルズあたりも聴いたりするんですか?

「好きですよ。影響も受けたし。そういえば去年だったかな? ジョージ・ハリスンのヨメだったパティ・ボイドの自伝『ワンダフル・トゥディ』を読んで、60年代後半からのビートルズの作品やジョージのソロなんかを聞き直しました。ビートルズだけじゃなく、60年代後半から70年代半ばくらいのロック、好きですね、ホント」


−さて、最後になります。まだファーストソロが出たばかりですが2作目は?

「このソロができたあと2作目の構想も出てきたのだけれど、いまはストップしている感じ。でも歌詞だけは先に書いておこうかなとかね。2作目に取り組むなら、2、3ヶ月、日記みたいに1日1曲作れる環境が欲しいなあと思います。贅沢な希望なんだけれど」


−ありがとうございました。ファンのみなさんにメッセージを

「今回は今までの俺とは違うところ、出せたかも。それから夏のJack in the Box 2010 Summerへの44の出演と、それ以降のソロライヴも楽しみに待っていて欲しいですわ」

あなたの知っているHirose Satoshi “Jimmy”ってどんな人?
第4回
4回目となる今回は舞台演劇やアイドルのグラビアなどの世界で活躍されている若手ヘアメイクアーティストの松前詠美子さん。

第2回目に登場したスタイリストの高橋恵美さんと同様に彼女も現在のJimmyのビジュアルイメージづくりに関わっている1人。

ロックミュージシャンのヘアメイクはVelvet Spiderの頃のJimmyが初めてだったという。
では松前詠美子さん、あなたが知っているメイク前のJimmyはどんな人?



昔の容姿に衝撃を受けました(笑)



−初期44MAGNUMの映像を見てびっくりしたとか

「舞台やグラビアアイドルのヘアメイクはしていましたが、ロックミュージシャンはJimmyさんが初めて。だから全く知らなかったんです、Jimmyさんも44MAGNUMも。Velvet Spiderの頃からJimmyさんとのお仕事がスタートして、関西ヘヴィメタル殴りこみギグの時には44MAGNUMのメンバー全員を担当することになりました。44MAGNUMがどんなバンドか知らないとマズイなあと思って慌てて映像で見せてもらって・・・。衝撃を受けました(笑)」

−いつの頃のだろう?金髪に派手な衣装の頃のかな?

「そうです、その頃のライブ映像。そりゃもう、ビックリしました。映像の中には今のJimmyさんとまったく違うJimmyさんがいました」


−ヘアスタイルもメイクもあの頃とは別人のようです。現在のビジュアルイメージを創るためにどんな演出をされていますか?

「Jimmyさんの場合は男性っぽいイメージを残しつつも女性っぽいイメージを出すように演出しています。たとえば骨格を出すとか目元をきつくするとか、そういうメイクをすることによって男らしさを出しています。また肌を陶器のように創って女性っぽさを出しています」

−メイクをしていて気が付かれたことってあります?

「肌がとてもキレイです。だから特別な手入れしているのかを聞いたことがあるんです。でも、何もしていないって。逆にどう手入れしたらいいのか聞かれちゃいました。いくつか教えてあげたら、それやってみる!って。でも、これだけ何もしないでまだ肌がキレイだから、もしかしたら何もしないというのが良いのかもしれません」
 

−メイクの際、Jimmyさんから何かリクエストってあるんですか?

「あれもしたい、これもしたい、とアイデアというか願望が沢山あるようです。そしてそういうアイデアを一度に全部、やってみたいっていうんです。でも、まとめるには一体どうしたらいいんだろう?って、わからなくなることがあります」

−でも、そんな難しい注文に何とか応えていらっしゃる

「方法を考えて、こちらから提案するんです。そうすると、それで行こう!って言ってくれて、お任せしてくれます。でも、メイクについてはいろいろと新しいチャレンジをしてみても、あまり変わっていないってことが多いんです、これが(笑)。だいたい気に入っている雰囲気があるようでやっているうちに結局、変わらなくなっちゃう。それからヘアスタイルはここ最近、変えませんね」


−最近のアップにされているヘアスタイルですか?

「そうです。かなり気に入っているみたいです。44MAGNUMのときもソロ活動の今回も同じアップにしています。CDショップのインストアイベントか何かの時にファンの方が質問されたって聞いたことあるんですけれど、Jimmyさんが髪を伸ばしているのはアップにするためなんです」

−ヘアメイクをする際、気を付けていることはありますか?

「髪の毛質が外人さんに近いので、ライブなどの激しい動きになるとあのアップのヘアスタイルを維持させることに苦労します。Jimmyさんもわたしも、ファンの方たちにできるだけ完璧な姿で見せたい、崩れている姿を見せたくないという気持ちがあるので相当気合い入れて創っていますよ」
 



いまの20代ってどんなことを考えている?



−髪の話で面白いエピソードがあるとか

「食事のとき、髪の毛が口にかかってしまうんだけれど、どうしたらいい?って相談されたんです。どうやら髪の毛が長くなってちょっとそろえてもらいたいってことを言いたかったみたい。そうかな、とは思いつつも、だったら食事中はしばったら?と」

−それはもしかすると切って欲しかったんじゃないですか?

「そうみたい。口にかかるんだ、って何度もいうから、最後にはカットしたいんですか?って聞いたら、うん、って。意外とシャイで照れ屋なのかもしれません、Jimmyさん」


−それはわかる気がします。そういえばメイク中にはどんなお話をされるんですか?

「最近の若い子はどんなことを考えているの?とか、何をしているの?とか聞かれます。わたし、ヘアメイクをするお店もやっていて、Jimmyさんはそこに来るお客さんは20代の子が多いってのを知っているので」

−若い子の考え方や行動を知ってどうしようというのでしょう(笑)

「気まずい話になっちゃうかなあ?いやいや、特に目的も何もないと思います!若い子たちが心配みたい。わたしも、かなり心配されちゃっていますから。男を見る目を養え、とかまるでお父さんのように・・・。でも、説教という感じではないかな。どちらかというといじられている感じ。わたし、スタッフの中では若い方なので、いじりやすいみたいで。まるで家族みたいなんです、Jimmyさんを支えているスタッフはみんな」


−Jimmyさんを支えているスタッフの方々に話を聞くとみなさん、ファミリーって感じを受けます

「それ、わたし自身もすごく感じます。わたしたちスタッフはみんな仲が良いです。だから撮影現場なんかは忙しいんだけれど、楽しいですよ。そうそう、現場ではJimmyさん、いっぱいジョークをいってくれて、場をなごませてくれます」
 



無機質で、人形のような雰囲気を



−ところでObsessionの話を。今回のヘアメイク、どう考えました?

「撮影をしたスタジオのセットと高橋恵美さんが創られた衣装を見て、その場で考えました。肌を白でマットに創り、唇の色をなくしています。44MAGNUMのスチール撮影用やライブ用でのメイクは唇に赤などの色を入れているのですが、今回のJimmyさんの場合には色を入れず、本当に黒と白のみ。無機質な、人形のようなイメージを狙いました」

−実は公開されていない白い衣装の写真も見せてもらったのですが、それは割とナチュラルな感じでした

「そうなんです。今回、実は衣装は黒と白の2パターン用意されていました。白い方を見たときに、今までのJimmyさんのイメージとはちょっと変えてみたいと思って、ヘアにしてもメイクにしても、黒い衣装の方とは対照的にナチュラルな感じで創りました。白い方のスチールを見たら、ファンの方はきっと新鮮に感じられると思いますよ」


−いつか白いバージョンも見たいですね。では最後になりますがJimmyさんにメッセージを・・・・・

「Jimmyさん、髪の毛を自分で切ってしまうことがあるんです。酔っ払った勢いか何かで。しかも、かなりの長さを切っちゃうんです。で、どうしよう?って言われることが度々あるんですけれど。それ、超・困ります。毎回、もう自分で切らないでくださいって、強く念を押すんですけれど、やっぱりやっちゃう。もう、ホントにお願いだから自分で切らないでくださいね(笑)」




 松前さんは「Obsession」に関わるスタッフの中では最年少の20代。44MAGNUMでJimmyがデビューした頃はまだ生まれていなかった。そういう世代の、つまりJimmyに対して先入観のようなモノがない彼女がヘアメイクを演出していることによって、Jimmyはさらに進化していく。



 次回はいよいよHirose Satoshi “Jimmy”の登場。スタッフや友人が語ったJimmyについて、どう感じたか、そして、Jimmy自身が新作「Obsession」についてを語る。あなたは知りたい?

あなたの知っているHirose Satoshi “Jimmy”ってどんな人?
第3回
これまで2回登場したのはJimmyと仕事上で関わりのある人たち。今回はJimmyの友人の1人である新聞記者のT・Mさんに語ってもらおう。彼は仕事上で付き合いがある訳ではない。たまたま友人の紹介でJimmyと知り合い、共通の趣味で意気投合したという。
T・Mさん、あなたが知っている普段のJimmyはどんな人?



言葉の響きや流れを大切にする人


−どういうきっかけで知り合われたのですが?

「友人の1人がジャパメタのバンドの元ギタリストで、数年前、その彼が紹介してくれました。面白いバンドがあるから、と誘われて一緒に見たのがThe Groove Line(注:JimmyがMARINOの吉田LEO、鎌田マナブ、Feel So Badの山口昌人とやっているバンド)。そこでギターを弾いていたのがJimmyさんでした」


−そのときの印象は?

「とてもフレンドリーで、気さくで。実はデビュー前の44MAGNUMも見たことがあります。新宿ロフトでやったときです。そのときのJimmyさんは金髪で、視線が鋭くて、冷めた感じで誰も近寄せない雰囲気を漂わせていました。そのときとはイメージがすっかり変わっていたので驚きました。あれ?こんな感じの人だっけ?というくらい」


−Jimmyさんを個人的に知っている方々はみなさん、フレンドリーだとおっしゃられます

「友人から紹介されたので、そう接してもらったのだろうと思っていたのですが、会えば会うほど見た目とは違ってフレンドリーな人なんだなあと。それにあれじゃあ疲れちゃうんじゃないかってくらい周りの人たちに対して気遣いしていて・・・」



−普段Jimmyさんとは普段どんな話をされているのですか?

「Jimmyさんは音楽と同じくらい、詩や小説などの文学に興味があって、精通されているんです。僕も学生時代から文学を勉強してきました。共通な趣味に文学というものがあったので、やはり文学の話が多いですよ。この小説が面白かったとか」



−文学といってもいろいろとあるのではないかと思います

「日本文学も西洋文学も、詩も小説も、よく読まれていますね。1、2年前かな、筑摩文庫からフランツ・カフカの未発表作品集が出たときにはかなり面白かったってメールされてきました。キレイな文章で気持ちが凛とするって。そのときにJimmyさんは言葉の響きや流れを大切にする人だなと感じました」



−文学に対する感性が新作「Obsession」にも現れていますね

「今回の作品は全曲、Jimmyさん本人が作詞をされたと聞いています。文学は言葉の響きや流れが重要です。音楽に乗る歌詞も同様だと思います。その点を意識して作詞されていると思います。それから今回、歌詞のストーリーには近現代文学に流れる哲学感みたいなモノも盛り込んでいるんじゃないかと思います。違うかな?」




文学科か美術科の教師のような?


−Jimmyさんからプレゼントをもらったことがあるとか

「以前、1950年代のアメリカで文学的にも文化的にもムーブメントになったビート・ジェネレーションの話をしたことがありました。その数ヵ月後、Jimmyさんに会ったとき、プレゼントしてもらったのがウィリアム・バローズという作家の小説『裸のランチ』の和訳で1965年に出た版。神保町で見つけてくれたそうです(注:東京・千代田区の神保町は古書店街があるので有名)。和訳の古い版って古典的な日本語を使っていたりするので味があります。ほんのちょっと、その話をしただけなのに覚えていらっしゃいました。たまたま、っておっしゃっていたけれど、相当、探してくれたんじゃないかと思います」


−古書街に、ですか・・・

「意外ですよね。でも神保町あたりの本屋さん、よくご存知のようです」



 −古書街へ一緒に行くこともあるんですか?

「いやいや、それはないです。でも、古書店のような古い日本の文化を感じられる場所が好きかもしれませんね。以前、飲みに行ったとき、僕がショットバーあたりで飲みながらやりましょうか?と提案したところ、間接照明がそんなに好きか?居酒屋さんの方が雰囲気が良いじゃないかと(笑)。連れて行ってもらったのは昔ながらの居酒屋さん、串焼き屋さんでした」


−昔ながらの居酒屋さんというと?

「チェーン店ではなく、縄のれんがあるようなタイプで、古くから駅前にあるような感じの居酒屋さん。そこで瓶ビール飲みながら、刺身をつまみつつ、熱く文学論を交わすという。まるで1960年代の学生のようなノリです。意外でしょ?」


−想像できませんね

「そのときの姿を見てもファンの方、多分、気が付かないんじゃないかな。そういう話をしているときのJimmyさん、全くの別人になっていますから。文学科か美術科の先生って感じで、ミュージシャンっぽくないし。何よりもステージでの、あの艶やかさがまったくないですもん(笑)」


−ところで音楽の話もされる?

「僕も60年代や70年代の洋楽が好きなのでそのあたりを話題に、しかもかなりマニアックに。Fleetwood Macってバンドがあって、そこに在籍していたBob WelchってギタリストがMac脱退後にPARISってハードロックバンドをやるんです。そのバンドのCD、廃盤になっていて、特にセカンドアルバムが入手困難だったのですが、何とか手に入らないかなってメールが来たりして」


−見つかったんですか?

「見つけましたよ。バロウズの本のお返しにプレゼントしました(笑)」


−ありがとうございました。Jimmyさんにメッセージありますか?

「以前、Jimmyさんと言葉遊びをしたことがあります。音楽は音を楽しむから音楽。だから文学も正しくは文楽じゃないか?って。またそういう言葉遊び、したいですね」




 T・Mさんが初めてJimmyを見たのは今から25〜6年前のことだ。「あのとき、ステージに立っていた人と客席から見ていた人が、同じテーブルで音楽以外の話をテーマに話したり、飲んだりするのは何だか妙な感じがした」という。



 次回はJimmyのヘアとメイクアップを担当している松前詠美子(えみこ)さんが登場。彼女はヘアスタイル、メイクを通じて、現在のHirose Satoshi “Jimmy”のヴィジュアルイメージを創り上げている。素顔のJimmyをあなたも知りたい?

あなたの知っているHirose Satoshi “Jimmy”ってどんな人?
第2回
今回登場するのはスタイリストの高橋恵美さん。彼女はこれまでにX-JAPANの故hideを始め、Die in cries、GLAYなど、国内著名ミュージシャンのスタイリングを手掛けてきた。現在はLM.C、そして44MAGNUMなどのスタイリングも担当している。また、自身のブランドELECTRIC(http://www.electric-jf.co.jp/)ではロックミュージックをファッションで表現することをテーマに展開させていて、ミュージシャンのみならず多くのロックファンからも支持されている。「Obsession」のプロモーション用スチール(写真)におけるJimmyのスタイリングは彼女が手掛けた。
Jimmyのヴィジュアルイメージを創り上げている高橋恵美さん。あなたが知っている普段着のJimmyはどんな感じ?



妖艶で高貴な感じかな?


−Jimmyさんとはいつ頃からお仕事をされていらっしゃいますか?

「昔から知ってはいたんですけど、仕事でお付き合いが始まったのは15年くらい前です(注:高橋恵美さんがスタイリングを手掛けていた元Die in cries、現D'ERLANGERのKyoのソロ活動をJimmyがギタリストとしてサポートしていたことから)」

−初めて会われたときの印象は?

「わたしは衣装を作る際、アーティストをいかに美しく魅せるかにポイントを置いています。ですから、いつもそういう視点でアーティストを見てしまうんです。Jimmyさんの体型は完璧なスタイル、バランス。スリムで、手足が長くて、腰の位置が高い。ファッションモデルもそういうバランスなんですが、もう少し胸板が厚い。Jimmyさんの体型はモデルよりも華奢(きゃしゃ)です」

−なるほど。そのときはどんな雰囲気を感じましたか?


「華麗な感じがしたんですけれど、華麗というだけじゃなくって、高貴な感じがしていたかな。それからSexyって言葉がありますけれど、それよりもっと妖艶な感じでした。あとはとんがっているというか、どこか近寄り難い雰囲気を漂わせていました」

−そのときと今で違いってありますか?


「体型だとか見た目は変わらないです。でも雰囲気はちょっと変わりました。以前よりも大人の艶気みたいなものが出ていて・・・。それとオフステージのJimmyさんを知ってから、わたし自身のJimmyさんに対する印象も変わりました」


−というとそれはどんな風に?

「実はチャーミングな人なんだって。お店(注:東京・原宿にある高橋恵美さんのショップ、ELECTRIC)に置いてあった商品の中に小さなラインストーンでできているクマのペンダントがあって。それを手に取って、かわいいなあ、これかわいいなあ、っておっしゃっていました。かわいいモノをかわいいとわかって、それをちゃんと口に出していえるのはとっても素敵なこと。そういう大人の男性って少ないでしょ(笑)」

−そのペンダント、Jimmyさんは買われました?

「どうでしょう?内緒(笑)」

−もっとクールで冷めている感じがするのですが

「たとえば移動中のクルマでね、ホント、よく話してくれるんです。とても気さくな人。ジョークなんかをいって、場をなごませてくれます。それで車内のみんなが大笑いになったりすることも。自然体で飾らないんです。ステージでのJimmyさんは二枚目だけれど、オフステージでは三枚目なところ、たくさんあります」

−そういう場面をみたら驚かれるファンも多いでしょう

「8頭身のシリアスなマンガの主人公が突然3頭身のギャグマンガの主人公になっちゃうんです。それにとてもやさしくて、温かいです。みんなが好きなのはそんなJimmyさんだから。男性にも女性にも、そして若い人からも同世代の人からも好かれる魅力的な人、そうそういませんよ」



表現したかったのは高貴さとやさしさと・・・


−これまでにもJimmyさんのステージ衣装を手掛けてこられました。

「すべてオリジナルで創っています。Jimmyさんは衣装の見せ方にこだわりがあるので、袖の長さを1センチ単位で何度も直すことがあります。しかも右袖だけ1センチ調整してみるとか」

−どうしてそこまでこだわるのでしょう?

「より美しく魅せたいというところからでしょうね。たとえばスチールに使うために製作した衣装をライブで使う場合、見え方が変わってしまいます。ステージでもスチールと同じように美しくみせるためには調整しなければならないです。Jimmyさんもわたしも妥協したくないので、いつも2回、3回と直すことになります」

−ところで、今回はどんなことを意識してスタイリングされましたか?

「高貴で、美しいところも出しながらも、内面にあるやさしさという部分を見せるための演出をしてみました。色は黒でポイントは素材感。ざらざらしたものよりもしっとりしたもの、繊細な感じのものを選んでみました。それからJimmyさんはわたしが思っている大人のSexyさという雰囲気を持っている人。だからそのSexyさをどうやって演出しようかというのも考えました」

−それがあのスチールになった訳ですね。Sexyさを打ち出すためにはどんな演出を?

「素材でいえばスパンコールやチベットラムを利用してみました。妖艶な部分をさらに強調するような感じにしています」


どっちのJimmyさんでいたいのかなあ?


−普段着のJimmyさんのファッションってどんな雰囲気なんですか?

「モード系のシンプルなデザインのもの。ブランドいうと昔のドルチェ・アンド・ガッバーナがお好きなようです。アイテムではクラシカルなもの、アウターではたとえばトレンチコートとかPコートを好まれています。インナーはニットやカットソーを選ばれていることが多いです」

−着こなしにも気を配っているとか

「ボタンの付いているシャツであれば、きちんとボタンを留めていらっしゃいます。ボタンを外して胸をはだけさせるような、着崩すようなことはされていません」

−ロックミュージシャンっぽくないですね

「普段着のセレクションから思うのはファッションに対する感性はロックミュージシャンの感性ではなくて、ファッションモデルの感性に近いと思います」

−ありがとうございました。Jimmyさんにメッセージありますか?

「メッセージじゃなくてもいいですか?ずっとJimmyさんに聞いてみたいことがあるんです。オフステージではいつも周りにいるみんなをなごませる三枚目役をしているのだけれど、本当はクールでいたいのかな?気を遣ってわたしたちにサービスしてくれているのかな?どっちなんだろう。どっちのJimmyさんでいたいんだろう?」



 Hirose Satoshi “Jimmy”の感性をファッションという形で目に見えるモノへと具現化してくれている高橋恵美さん。「こんなことを話したらマズイよね」と心配しながらも、Jimmyのありのままの姿を語ってくれた。本当のJimmyを知っているからこそ、彼女が創りだす衣装からはJimmyらしさがより一層醸し出されている。



 次回はHirose Satoshi “Jimmy”の友人で新聞記者のT・Mさんに素顔のJimmyを語ってもらおう。友人の前でアーティストという仮面を脱ぎ捨て、一音楽ファン、一読書家になり、70年代ロックや文学を熱く語っている素顔のJimmyをあなたも知りたい?

あなたの知っているHirose Satoshi “Jimmy”ってどんな人?
第1回
最初に登場するのは大手音楽雑誌出版社勤務のY・Mさん。自身も趣味でギターを演奏するY・MさんにとってJimmyは憧れのギタリストの1人だった。彼は「Jimmyさんとの付き合いが始まったのは4、5年前。現在の会社に入社したおかげで知り合うことができた」と嬉しそうに語る。きっかけは仕事だったが、今ではプライベートでも付き合いがあるそうだ。

Jimmyから大きな信頼を寄せられているY・Mさん。あなたが知っているJimmyはどんな人?




抱いてきたイメージのままでした。


−仕事を通じて初めてJimmyさんに会ったのですよね?どうでした、そのときの印象は?

「仕事がら、内外問わず多くのミュージシャンに会います。実際に会ってみるとイメージが違うアーティストって多いんですよ。外見的なところが気になる人もいたし、内面的なところが気になる人もいて・・・。この人は昔憧れていたのになあってことがしばしば。しかし、Jimmyさんは僕が想像していた通りの人でした」

−では会う前に抱いていたJimmyさんのイメージは?

「僕自身も趣味でギターを弾きますし、ハードロックが好きだったので、憧れのギタリストでした。月並みな言葉だけれど、カッコイイという言葉が一番ピッタリするギタリストだと。実際に会うとそのイメージのままでした。ロックギタリスト、ロックミュージシャンというオーラみたいなモノが出ていました」

−憧れていた人と仕事ができるというのは羨ましいです


「Jimmyさんは日本のヘヴィ・メタルの一時代を築き上げた人ですし、ビジュアル系というかそういうジャンルの元祖でもあると思うんです。何よりも尊敬するギタリストの1人ですから、そういう人と一緒に仕事ができるのは嬉しいことです」




新作“Obsession”に生かされているJimmyが受けた刺激とは・・・


−ところで音楽以外の話をすることはあります?

「Jimmyさんって音楽以外にも絵画をはじめとする美術や詩など、芸術活動全般に関心があるんですよ。以前、三島由紀夫さんが愛した絵に関する話を1時間以上されていたことがありました。僕はそちらに関しては疎いので、聞いてもただ頷くだけしかできなかったんですけど(笑)」

−どうしてまたJimmyさんはそんな話をしたのでしょう?

「その話をした4、5年前、Jimmyさんはちょうどバンド活動をストップしていた頃で、新しいことに取り組むための準備期間でした。直接聞いた訳ではないから確信は持てないんですが、絵画や詩といった音楽以外の芸術から刺激をもらいたかったのかもしれませんね」

−そのときの刺激は今回のソロアルバム“Obsession”に生かされているかもしれません

「今回の作品はJimmyさんが作詞されているのですが、影響、きっと出ていると思いますよ。絵画、詩、音楽とジャンルは違えども創作活動をしているアーティストですから」

−音楽の話題はどんなことを?

「好きなギタリストについて話したことがあるんですよ。そのときにJimmyさんが挙げたのはJimmy Page、Gary Moore、John Sykesとかだったかな、確か。中でもJimmy Pageは相当、好きみたいですね。本人も“Jimmy”な訳ですし(笑)」

−なるほど。確かにJimmyさんのプレイには彼らの影響が見えると思います


「Jimmy PageもGary Mooreもテクニックをひけらかすような速弾きではなく、無骨な感じの速弾きをするプレイスタイルなのだけれど、Jimmyさんもそうですよね。あのオルタネイトピッキングで速弾きしていくところあたりなんかが特に・・・」

−テクニックだけでは推し量れないギタリスト、そういう感じでしょうか?

「そうです。ああいう独特の雰囲気を出せるギタリストって多くないと思います。余談ですけれど、JimmyさんのLed Zeppelinのコピー、すごく上手いんですよ。コピーをやりそうな感じには見えないんですけど(注:Jimmyが数年前から参加しているバンド、The Groove LineのライブではLed Zeppelinのカバーを披露したこともある)」




いつまでも憧れのロックギタリストであって欲しい


−憧れていた人と仕事をすることになって、それが友人の一人となり・・・。初めて会ったときと今ではJimmyさんの印象やイメージ、変わっていますか?

「いやいや、全く変わらないですよ。今でも僕にとっては憧れの人、尊敬するロックギタリストですから。そして会うたびにカッコいいなあって。しかも今は年齢を重ねてきた、その年齢なりのカッコよさみたいなモノも感じるんです」

−ではその憧れのギタリスト、Jimmyさんにメッセージを

「Jimmyさんにはいつまでも変わらず、僕が憧れてきたJimmyさんのままでいて欲しいです。つまり、それはいつまでもロックミュージシャンでいて欲しい、カッコいいままのJimmyさんでいて欲しい。そういうことなんです。僕は自分の仕事を通じて、もっと多くの音楽ファンにJimmyさんというロックミュージシャンを知ってもらいたいと思っています」



 Y・MさんはいまJimmyとやってみたい仕事があるという。仕事における関係者であり、友人であり、そしてファンでもあるY・MさんがJimmyとやってみたい仕事って一体?彼はそれがどういうことなのかは教えてくれなかったのだが、多くの人にJimmyの音楽を知ってもらうための何かなのだろう。



 次回は44MAGNUM、そしてHirose Satoshi “Jimmy”の衣装を手掛けているスタイリストの高橋恵美さんが登場。Jimmyだけではなく、多くの著名なミュージシャンに支持されている彼女がJimmyをどうプロデュースしたのか、さらには彼女が見た普段着のJimmyなども語ってもらおう。Jimmyのさらに意外な姿が見えてくるはずだ。